サポーターズコラム

「起業家と一緒に世界を変えたい」。死の覚悟から創業し、起業支援3000件超の実績を誇るウェイビー伊藤代表が語る現代の起業家像(株式会社ウェイビー 伊藤 健太CEO)【festivo起業家インタビュー】
一歩先行く先輩起業家、事業家や特異な視点をもつ起業家の今を切り出すインタビュー企画、festivo起業家インタビュー『Our life is our flame.-情熱に生きる僕らの今-』。今回は3,000件以上の起業家支援実績を誇る株式会社ウェイビー 伊藤氏に登場していただきました。
日々様々な起業家を支援する伊藤氏の起業家像と、”死を覚悟したから”という起業経緯、これまでの人生や生き方についてインタビューしました。
・「大多数がとる選択肢は、僕がとらなくてもいい」
―― なぜ、起業しようと思ったのですか?
伊藤:もともと何かの職業に就くのが嫌でした。たとえば商社に入って鉄を扱うとなると、鉄のことしか聞かれなくなる。でも僕は、鉄のために生まれてきたわけじゃない。それがすごく嫌でした。人間としての可能性が狭まるような気がして。
だから、「自分の力で仕事をしたい」という、漠然とした思いがあったんです。でも、何をしていいのかわからなかった。具体的にやりたいことがないまま、中長期ではイメージを持っていた感じです。
ただし、可能性が広そうなところを選ぼうとは思っていました。また、努力の必要性についても認識していたと思います。だからこそ、その都度、難しいことにチャレンジしていこうと考えていました。
―― それはいつ頃からですか?
伊藤:小さい頃からそういう思いはありました。職業ではなく、「オリンピックに出たい」や「ノーベル賞をとりたい」などのイメージしかなくて。そこまでのたどり着き方は何でもいいなと思っていました。
そもそも幼い頃から、いい意味でも悪い意味でも、屁理屈をこねるタイプだったんです。たとえば小学校でディベート大会がありました。テーマは「アナログな時計とデジタル時計、どっちがいいか」というものです。
僕は瞬間的にデジタルがいいと思っていました。ロジックも固まっていた。でも、クラスの9割がデジタルの方に手を上げたので、僕はアナログの方に手を上げました。そのうえで、アナログがデジタルに勝つにはどうすればいいかと考えていたんです。
大多数がとる選択肢は、僕がとらなくてもいい。誰がやっても変わらない。人生は1回きりだから、自分らしいアウトプットを出し続けたい。背景に、そういう思いがあったんだと思います。
―― まさに起業家向きのマインドですね。
伊藤:でも僕は、こう見えて、意外と保守的なんです。だから会社経営に関しても、足元のキャッシュをつくったうえで、利益を出し続けています。たとえ今、出資の話があったとしても、「自己キャッシュでいいよね」という発想になってしまうと思います。
つまり、「自分は特別な人間だ」と思いながらも、一方で、努力が自分の生命線だと感じていたんですね。なので、天狗になることはありません。慶応大学に入り、リクルートのビジネスコンテストで優勝したと思いきや、片や行政書士の資格もとっていたほどです。
・死の覚悟によって決意を固めた起業前夜
―― 立ち上げの経緯について教えてください。
伊藤:そもそも特定の職業に就きたくなかったので、政治家を目指していました。そのためには弁護士だ、と。ただ、お金を貯める必要があったので就職しました。でも、ロースクールの入学を待っている時に、病気をしてしまったんです。大腸のポリープでした。
当時は、悪性と良性とが半々の確率で。今の年齢で発見されていたら完全に悪性だったと思います。それが会社を立ち上げようと思ったきっかけです。23歳のときでした。準備をするのはやめて、今すぐ、社会や地球に対して役に立つことをしたいと決意したんです。
なので、会社を設立した理由は「世界を変える」ため。それだけです。7年が経ち、今は「起業家と一緒に世界を変える」と考えています。起業家向けの塾なども人数が増えていて、いよいよ、やるべきことが見えてきました。
―― 事業の形態はどのように変化していったのですか?
伊藤:大切にしているのは等身大です。自分たちの成長過程が、そのまま企業の成長過程だと思っています。自分たちが直面した問題は、多くの企業が直面するので、その問題解決をすべて商品にしています。
だからこそ、商品は増え続けます。仮にこのまま会社が大きくなり、千人の会社になり、1万人の会社になり、上場したとなれば、その過程で起きることはすべて経験したことになります。これらの経験は、すべて、お客さんにも展開できると思います。
―― 具体的にはどのような事業からはじめたのですか?
最初は行政書士事務所からスタートしました。会社設立に関する手続きを請け負い、初年度から数百件の依頼がきていました。やがてお金に関する相談が増え、銀行や政策金融公庫など、資金調達のお手伝いもはじめて。
その後、勉強会やセミナーなど、イベント系の事業へと展開しています。そのような過程を経て成長し、2年目の段階でかなり大きくなりました。通常の行政書士事務所と比較して10倍ほどの成長率だったと思います。それで書籍出版の話などもいただいて。
ポイントは、Webからの集客に強みをもっていたことです。そのため、3年目からは、Web制作の事業も請け負うようになりました。
・もっとも辛いのは「顧客の期待値を下回ってしまう」こと
―― 起業して良かったと思うことはありますか?
伊藤:今、この瞬間は、すごくおもしろいことをやっているので楽しいと思っています。でも、今年で30歳になり、世の中に対してどれだけインパクトを出しているのかという意味では、何もできていないと思っています。
たとえばリクルートに入社して、爆速で10年で社長、役員になっていたとしたら。世の中に対して、もっと良いことができたかもしれません。そう考えると、起業して良かったのかどうかはわかりません。
そもそも僕は、飽きっぽいんですよ。起業して、毎日違うことが起きて、会社も成長している。その点では楽しいんですけど、たとえば「映画監督になったらどうなるんだろう」などとも考えたりする。別の自分を想像するんです。
これから先、会社はもっと大きくなると思います。でも、得意なことばかりしていたら、先が想像できてしまう。できれば新しいことをしていたい。そうは言っても、誰かに引き継いで中途半端にもしたくない。悩ましいところです。でも日本の中での起業のイメージというものは変えたいと心底思っています。必ずやりきります。
―― とくに大変だったことは何ですか?
伊藤:僕の場合、起業のきっかけが「死にそうになった」体験でした。ですので、自分が死んでしまうことに比べれば、何が起きてもたいしたことだとは思いません。たとえ会社がつぶれてしまっても、それはただの力不足です。
むしろ辛いのは、期待してくれたお客さんに対し、期待値を下回ることしかできなかったときです。とにかく申し訳ないという想いになります。「ああ、そんなもんか」と思われてしまうのは辛いですね。
社員が辞めてしまうこともありますが、仕方のないことだと思っています。あくまでも自分の人生なので。僕自身、どこかの会社に就職したとしても、一か所に留まりたいとは思いません。会社を去ってしまうのは自然なことだと思います。
―― 今後、どういったサービスを展開しようと考えていますか?
伊藤:『助っ人』という起業家のためのメディアの、アプリをリリースする予定です。『助っ人』は、起業家を応援するというよりも、「起業家精神とは何か」を体験できるメディアにしたいと思っています。そのため、起業家精神というものを突き詰めて考えています。
もう1つは、新しい会社の形態について模索しています。そもそも会社組織として1億2億稼いでも、社会に対するインパクトはありません。会社の成長に時間を使うぐらいなら、信頼できる仲間とともに、社会に対してバリューを提供したいと思っています。もちろんしっかりと自分の会社が稼げないで、何かを言っても、社会は認めてくれません。そのため会社としてしっかりと稼いでいきます。稼ぐというのは、しっかりとした価値を有したサービスを展開しているということです。
・最近の起業家志望者に欠けているもの
―― 数千件の起業支援の中で最近の起業家について思うことはありますか?
伊藤:とくに、若い起業志望者が増えていますね。でも正直なところ、レベルが低いと感じています。そういう人に対しては、正直に「起業しない方がいいよ」と伝えています。
レベルというのは、頭の良さではなく「人間性」です。相手に対して尊敬の念をもって接しているかどうか、ということ。また、明確な目的をもって、社会にバリューを提供しようと考えている人が少ないのも気にかかります。いわゆるファッション起業ですね。起業した自分がかっこいいみたいな。
僕もそんな感じだったので、最初はそれでよいかもしれませんが、そこからしっかりと目的をみつけることをしなくてはいけません。
だからこそ、安易に起業を勧めてはいません。起業時には銀行などからお金を借ります。でも、この人たちが3年とか5年して、会社が潰れた場合。お金を返せなくなり、その結果、起業を応援する人が減ってしまう可能性もあるのです。
無責任に入り口だけ支援するのは良くないことだと思います。また、起業の「応援」という言葉にも違和感をおぼえています。できる人は、自らどんどん新しいサービスをつくっていくものですから。
―― 起業家にとって必要なものは、何だと思いますか?
伊藤:やはり「人に好かれること」が大事だと思います。多くの人は自分中心で物事を考えています。だから、お金をくれる人だけがお客さんであるととらえている。でも、それだけではないはずです。
お金がない時代には、感謝の気持ちを示したり、物で返したりなど、相手本位で物事を考えていたのではないでしょうか。いずれにしても、自分本意に考えている人は、成功できないと思います。
―― 起業家・起業志望者へのメッセージをお願いします。
伊藤:そもそも起業は、特別なことではありません。起業はあくまでも手段です。自分の生き方を突き詰めて考えてみたときに、自然と行き着いたものが起業だった。それが自然な流れです。人為的に行うものではない。人為的に考えるのですごくハードルが高く感じるわけですよね。
でも、「今すぐやりたい」という想いは大切にするべきです。結局のところ、成功・不成功を左右するのは、お金の量ではなく、社会的な認知でもなく、自分がいかに納得できるかということですから。
【おまけ企画】起業家の一日ウォッチング
「伊藤 健太さん」の一日
睡眠時間は1日平均8時間、しっかり確保しています。おおむね12時すぎに寝て、9時頃に起きています。ただし、起きているあいだはほとんど休んでいません。アポイントや勉強会の時間が多く、書籍の執筆などにも時間をあてています。お客さまとの付き合いはほとんどありません。スケジュールに関してはルーティーンにせず、自由にしているのが好きです。たまにジョギングをしています。
【起業家プロフィール】株式会社ウェイビー 伊藤 健太CEO
1986年11月21日生まれ。大学2年次の2006年に19歳で行政書士試験合格(10代の合格率は約0.01%)。大学3年次にリクルート主催のビジネスコンテストで優勝。慶應義塾大学法学部卒業後、損害保険会社に9か月勤務した後、ロースクールを目指し退職。翌年ロースクールに進学せずにお金、人脈、経験なしの中、資本金5万円で株式会社ウェイビーを創業。7か月間売上がなく、瀕死の中、ウェイビー行政書士事務所を立ち上げる。起業家なくして日本の成長なしとの想いから起業支援を開始。創業から1年間で設立・創業融資で500件以上の相談を受ける。その後、自分が体験してきたことをどんどんサービス化し、「起業」を軸に全国有数の規模になってきているマーケティング塾イトケン塾、、2千人近くが参加するTERACOYA、マーケティング支援、WEBマーケティング、投資、メディア運営と事業展開。
起業の専門家として、NHK、CCTV、リクルートR25、みずほ総研Foleなど、メディア掲載実績も多数。商業出版も3冊、2016年には待望の起業に関する本、起業家が知っておくマーケティングについての本を2冊出版予定。
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(編集:山中 勇樹)
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