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高卒・バツイチ・子持ち。だからこそ常にバックアッププランを持っていた。「やりたい」を「できる」にKaeru(変える)場所、オオサカン大崎氏の軌跡(株式会社Kaeru 大崎 弘子CEO)【festivo起業家インタビュー】

一歩先行く先輩起業家、事業家や特異な視点をもつ起業家の今を切り出すインタビュー企画、festivo起業家インタビュー『Our life is our flame.-情熱に生きる僕らの今-』。今回はオオサカンスペースを中心に数々のビジネスを展開する、株式会社Kaeru 大崎氏に登場していただきました。

アルバイトから雇われ社長、そしてMBOにより独立へ。はじめから起業を志向していたわけではなかった大崎さんのこれまでとこれからをインタビューしました。

 

「高卒・バツイチ・子持ちアルバイト」から会社社長への転身

 

―まずはプロフィールを教えてください。

大崎弘子と申します。株式会社Kaeruの代表取締役をしています。会社名は2015年10月に変わり、その前までは「株式会社EC studioスペース」という名前でした。それともう一社、ヴェロスタ合同会社の代表社員もしています。

 

日常会話から新しいビジネスが生まれる「オオサカンスペース」

 

スポーツ自転車専用の駐輪場「ヴェロスタ」

 

もともと、2006年5月にChatWorkというWEBサービスを提供している会社にアルバイトとして入社し、2010年、代表である山本さんの秘書になりました。それまではずっとアルバイトで。

ただ、山本さんと一緒にいるのが面白くて、秘書になる前から行動をともにしていました。海外出張へも一緒に行きましたし、商談にもついていくことが多かったです。それからは、アルバイトという肩書だとおかしかったので、社員になりました。

その後、山本さんがシリコンバレーに行くことになり、「これからどうする?」という話になって。「何かやりたいことはない?」と聞かれて、コワーキングスペースが東京で流行っていたこともあり、また、大阪にもなかったので、気になっていると伝えました。まだコワーキングスペースの初期の頃です。

「コワーキングスペースをやるのなら別会社でやってみな」という感じで、2011年、グループ会社の代表に就任しました。それから「オオサカンスペース」を運営しています。

 

―オオサカンスペースの詳細について教えてください。

メンバー数は120人ほど。商業規模感は正確には把握していませんが、10社以上の会社が生まれているのは確かです。

メンバーは法人じゃなくても大丈夫です。駐車場予約サービスを提供している「akippa(アキッパ)」の社長もメンバーですし、あとは「My ISBN」もそうですね。いろいろな会社が入っているので、一緒に伸びていきたいという雰囲気があります。

 

―オオサカンスペースが他と違うのは、どういったところでしょうか?

メンバー主催のイベントが数多く行われていることです。もともとコワーキングスペースは儲かる事業ではないので、みんなが知りたいと思うようなことを、イベントとして実施しています。

たとえば「広報実践講座」というイベントがあります。たっぷり12時間使って勉強することで、新人が1人で広報を担当できる内容となっています。

 

地方の広報力をあげたいと開催を続ける「広報実践講座」

 

「人のためではなく自分のために」。
許容範囲内のリスクで挑戦した創業期

 

―アルバイトからはじまって、会社の代表を務めないかと打診を受けたとき、どう思いましたか? 責任も感じたかと思いますが。

100%子会社の社長という身分は、同じ会社にいる社員とほとんど一緒です。部長に昇格したような感じでしょうか。唯一、違うところがあるとすれば、辞められないこと。社長なので、責任があります。部長だったら辞められるかもしれませんが、社長は辞められません。

でも、そのときの私には、コワーキングスペースが必要だったんです。単純に欲しかったんですよ。そういう場所が。

「作りたい」というよりは「欲しかった」。人のためではなく、自分ためにです。なので、自分が一番、活用しています。

 

―責任も負うようになり、リスクやプレッシャーを感じる人も多いですが、大崎さんの場合はそれよりも「ウォント」が強かったんですね。リスクは感じていましたか?

たとえオオサカンスペースに人が1人も来なかったとしても、家賃と自分の給料だけは稼げるという確信はありました。広報や経理のスキルがありましたので。最低限、会社から出ていくお金は捻出できるという気持ちはずっとありましたね。

なので、自分の範囲内で挑戦しているという感じです。最悪、死ぬことはない。いま思えば、子どもがいたことも影響しています。無謀なチャレンジをできる自由はなく、確実に伸ばしていくような自由しかないなかで、起業にチャレンジしていました。

 

―「もしものときは路頭に迷ったらいい」という起業家もいますが、そうではなかったと。

路頭に迷ったら絶対ダメなので、すべてに保険をかけ、これがダメだったらこれというように、考えていました。いつでもバックアッププランを用意してやってきたのです。

 

4人のスタッフが支えてくれるのでもっとチャレンジできるようになりました

 

コワーキングスペースの運営に向いているかどうかを判別する
もっともカンタンな方法

 

―お金で困る起業家も多いですが、苦労した経験についてはいかがですか?

苦労した経験はたくさんありますが、お金で死にそうになったことはありません。それは、自身のキャリアを考えて働いてきたおかげだと思います。やはり、女性がチャレンジするには、さまざまなスキルを身につけるべきですよね。

私の場合は、経理のスキルがあったからこそ、仕事を変えるというチャレンジができました。そして、仕事を変えることによって、新しいスキルも身につきました。

ですので、会社に仕事をさせられている、という気持ちはまったくなかったですね。主体的に自分で仕事を選んできたし、その仕事から得られるスキルもわかっていましたし。さまざまなスキルが手に入ると、チャレンジできるようになると思います。

―お金とスキル以外で、起業に必要なものはなんでしょうか?

マインドとして、「人のため」だけはダメだと思います。人のためであって、さらに、自分のためでもあることに挑戦するべきです。

コワーキングスペースをやりたいという人はたくさんいますが、なかには「人の役に立ちたい」という人も多いです。でも、そうではなく、人のためと自分のため、そのバランスが大事です。

人のためにもなり、自分のためにもなるということが何もないという状況でコワーキングスペースをやりたいと言っても、他の人にはあまり響きません。

また、コワーキングスペースの運営に関して言えば、向いているか向いていないかをカンタンに判別する方法があるんですよ。

まず、イベントをやってみること。そのイベントにどのくらいの人が来るか、どんな人が来るか。そして、定期的に開催してみて、そこにコミュニティができるかどうか。結局のところ、そのコミュニティが場所になるだけなんですね。

先にコミュニティを作ればリスクはありません。なので、まずはコミュニティを作ること。コワーキングスペースというのは、自分がもっているコミュニティの先にあるコミュニティなのです。

自分の持っているコミュニティの先にある、見えていないコミュニティが、場をもとにつながってくる。それがコワーキングスペースだと思います。

なので、コミュニティがない人がコワーキングスペースをやろうと思ったら、「電源カフェ」とか「シェアオフィス」のほうがいいと思います。立地で勝負したり、料理にこだわるなど、別の部分に力点を置くべきですね。

 

「やりたい」が「できる」に変わる場所を提供していきたい

―MBO(マネジメント・バイアウト)を経て自分の会社になりました。これから先のビジョンはありますか?

私は、そのときにやりたいと思うことをやっています。これからも、規模に関係なく、そのときにやりたいことをやりたいですね。

「やりたい」と思ったことを「できる」に変える。そういう場所を提供したいという想いが、そもそものはじまりです。駐輪場を作れないかなと思ったとき、どうやったらできるかと考え、人をつなぎ、できると思った瞬間が何より楽しいのです。

次の場所へのチャレンジはビジネス合宿所「尾崎の家」

 

Wi-Fi、プロジェクター、ホワイトボードなど旅をしながら働くチーム向け

 

これから先、何をやりたいと思うかはわかりませんが、自分主体でやっていくと思います。自分がやりたいと思うことをやり、一緒にいたい人といる。

世の中を変えたいというよりは、本当に自分がやりたいことの先に、誰かのニーズがある。それをどうやったらできるか考え、事業化する。儲けの幅はあまり関係ありません。ただ、赤字にはしたくない。

ハワイ旅行に行きたいと思っている人がいたとして、あるとき、「行きたい」が「行ける」に変わる瞬間があるんですね。休みができたとか、彼氏ができたとか、お金が入ったとか。行けると思ったときって、すごくテンションがあがりますよね。まだ行っていないのにも関わらず。

本人はなにも変わっていないのに、大きな幸福感を得られる。人って、できると思うことに、できたときと同じぐらい幸福感を得られるんですね。私はその瞬間が大好きで。その瞬間のためにつねに準備しているし、自分だけが準備するのではなく、できる限りいろんな人にシェアしています。

 

これから半年の計画を発表する「これから会議」

 

 


1万時間かけて得られるスキルを最低でも2つ習得すること。起業はそれから

 

―先ほどスキルというお話がありましたが、これから起業する人が考えておいたほうがいいことはありますか?

2個以上のスキルは絶対にいると思います。たとえ1個のスキルでも、世界レベルならいいのですが、でなければ2個は必要です。

たとえば、WEBスキルがあってライティングスキルがあるとか、プログラミングができて他のことができるとか。何でもいいんです。近いところで2つあればいい。

スキルレベルとしては、それで転職できるぐらいですね。

この前シェアしたある記事にも、似たようなことが書かれていました。お金はむしりとってくるものではなく、自分のまわりにあるもので、必要なときに必要なだけお金に変えるものだと。私がぼんやりと考えていたことにピッタリでした。

「藤原和博氏が語る、年収1000万〜1億円を目指す人生戦略」by logmi http://logmi.jp/94488

 

デザイナーだったらライターにピボットさせる。広告をやったのなら広報にピボットさせる。まずは近いところのスキルを習得して、それからはできるだけ遠いところに一歩をだす。その面積があなたの収入の範囲だと。あとはそこからいくらとるのか。

転職できるレベルのスキルを2つ。そして、さらに遠くへと1歩踏み出したところに、起業がある。それなら、絶対に失敗することはありません。記事では1万時間となっていますが転職できると思うレベルがスキルが身についたと判断するわたしの基準です。そのために準備することはムダではありません。まずは1つのスキルに1万時間。それを2つですね。

もし、それを大変だと思うのであれば、起業はしないほうがいいと思います。起業はもっと大変です。まだ起業の準備ができていないのでいまいる場所でもう少し粘ってみるのをオススメします。

 

【おまけ企画】起業家の一日ウォッチング
「大崎 弘子さん」の一日

朝6時に起きて1〜2時間ぐらいスマホでニュースをチェック。10時半〜11時ぐらいに出社。日中は仕事をして、夜にイベントがあれば参加しています。夜型のまま朝型になってしまったので、睡眠時間は短いほう。最近では意識してひとりでいる時間もつくるようにしています。

 

【起業家プロフィール】株式会社Kaeru 大崎 弘子CEO

大阪生まれの大阪育ち。バツイチ、2児の母。高校卒業後、作業服卸会社に入社。専業主婦を経て、2006年「ChatWork(旧 EC studio)」にアルバイトとして入社。広報、社長秘書を務め、2011年に設立したグループ会社「EC studioスペース」の社長に就任。2012年からオオサカンスペースを運営。2015年7月、MBOにて会社を買い取り、10月から株式会社Kaeruへ社名変更。現在に至る。世界30都市で開催される「IT飲み会」会長、広報ウーマンなにわ部、関西広報ミーティング、船場経済新聞の編集長といった顔も。コミュニティを作り、コミュニティ同士をつなぐのが得意。

メッチャお盛んな『コワーキングスペース』を大阪『本町』に作ろう!
(オオサカンスペースオープン前のコンセプト動画)

 

「おはよう」「ランチ行かない?」「今日飲みに行く?」「こんな仕事できる人知らない?」「こんなサービス考えたんだけど」
そんな会話が日々飛び交うオオサカンスペース、仕事を助け合ったり、人生について語ったり、一緒にビジネスをしたい人と出会える場所です。

月1回は晩ご飯を持ち寄って食べたり、年に数回海外視察に行ったり、たこ焼きパーティを開催したりと交流も盛んで人見知りの方に特にオススメです。

オオサカンスペース(株式会社 Kaeru)

(編集:山中 勇樹