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資料を捨てられ、新社員からもダメだしされて……。それでも「主婦・ママの働くをつくる」マミーゴー荻野氏が描く女性の未来(株式会社マミーゴー 荻野 久美子CEO)【festivo起業家インタビュー】

一歩先行く先輩起業家、事業家や特異な視点をもつ起業家の今を切り出すインタビュー企画、festivo起業家インタビュー『Our life is our flame.-情熱に生きる僕らの今-』。今回は15年の経営経験のある株式会社マミーゴー 荻野氏に登場していただきました。

初めて作った会社は数年で20人の社員を抱えるまでに成長、2つ目の会社もコンテストでの受賞経験など華々しいスタートを切りますが、”失敗の連続だった”と荻野さんはおっしゃいます。その理由とは?

 

父親が突然のリストラに。兄と協力して最初の起業経験

 

もともと起業を志望していたわけではなく、夢は専業主婦でした。なぜ専業主婦が夢だったかというと、家が貧乏で、お金に困りたくないというのがあって。

しかも、私が短大生だったとき、突然、父がリストラされてしまい……。でも、家のローンも残っているし。

それで何かしなきゃ、と。たまたま兄が建築関係の職人をしていたので、私が短大を卒業したあと、一緒に会社を立ち上げました。

兄は職人でしたが、営業もできました。私は財務を担当し、手分けして、とにかく24時間ずっと仕事をしていましたね。それが20代前半です。その後、私が25歳になる頃には、従業員が20名ほどになるまで成長していました。



「仕事も結婚も両立できる場をつくりたい」。25で独立を決意

 

私自身、振り返って考えてみると、この5年間で飛躍的に成長していたんです。仕事ってすごいなと思いました。自己成長にもなるし、社会の役にも立てるし、人から必要とされるし。

ただ、世間的には、仕事と結婚の両立が“できているようで、できていない”実態があることに気がつきました。ITなどのインフラも整ってきているのに、どちらか選ばなければならなかったんです。

それからは、「仕事も結婚も両立できる場をつくりたい」と思うようになりました。30歳までにとにかくお金を貯め、あとは、事業で成功されている方や没頭されている方にもお話を伺いに行きました。



「経済界」で特別賞受賞! でも、それが最初の失敗でした

 

30歳になり、最初に立ち上げたのがオンラインの教育事業です。いわゆる「eラーニング」ですね。エンジニアさんにシステム制作を依頼するなどして、4~500万円ぐらいかかりました。

31歳のとき、「経済界」のイベントで、サイバーエージェントの藤田さんやZOZOTOWNの前澤さんの前でプレゼンをさせてもらいました。それで特別賞をもらったんですよ。

そのとき、サイバーエージェントの藤田さんに「すごいね。だけど、ここを直したほうがいいよ」と言われたことがあって。それは、講師からお金をとってはいけないということ。ユーザーと講師の双方からお金をとっていたので。

理由は、「良いコンテンツをつくりたいなら数が必要になるから」、とのことでした。でも、当時の私には、その意味がわからなかったんです。

また、賞をもらってしまったこともあり、「この事業は成功する!」と勝手に思い込んでしまって。でも、待てど暮らせど、ユーザーは増えず、あまり購入もしてもらえない。

なので、最初の失敗は賞をもらってしまったことだと思います。それで出会いが増えたということはありますけどね。



教育から働く場の提供へ。
しかし、主婦・ママに価値を感じていただけない実態が

 

その他の失敗は、支援するべき主婦からもお金をとってしまったこと。

そもそもオンラインはITじゃないですか。女性は男性に比べてITリテラシーが低い傾向があります。たとえ100円でも200円でも、難しい思いをしてまでやらないことがわかったんです。

失敗に気づいたのは、スタートしてから1~2年後でした。すでにお金もいっぱい使っているし、スタッフも雇用していたので、やめるにやめられない状態で。

そこで次に考えたのが、働く場の提供です。具体的には人材派遣会社との提携を模索しました。「こんな優秀な主婦ママがいます。紹介しますのでキャッシュをください」、と。アポをとり、何十社、何百社まわりました。

でも、9割に断られてしまい……。その理由は、主婦・ママが働く人材としてあまり価値があると思われていなかったからです。

それもそのはずで、人材派遣会社は、企業に人材を紹介し、派遣時間が収益となるわけで。その派遣時間が急な育児などで削られてしまうと、ビジネスモデルとして成り立ちません。

だからこそ、主婦・ママに対して価値を感じていただけない。とても悲しい気持ちになりました。



目の前で企画書を捨てられ、新入社員にもけなされ……。
それでもあきらめず「マミーゴー」立ち上げへ

 

あるとき、誰もが知るような人材派遣会社の社長にアポがとれ、プレゼンをしたときのことです。プレゼン後、目の前で資料を捨てられたんです。「こんなの価値ないよ」、と。

それでその社長が、新入社員みたいな人を連れてきて、「この話、どう思う?」と聞いたんです。「あり得ないですね」と言われました。

私はそのとき、「新入社員ですらわかっていることを、私はわかっていないんだ」と思ってしまいました。ゴミ箱に捨てられた企画書を見て、まるで自分が捨てられたような気がして……。

私の周りの人は、今のスタッフも然りで、みんな優秀な人材なんですよ。でも、肩書が主婦・ママというだけでそう見られてしまう。それがすごく辛くて。

新宿から六本木までの帰りの電車の中、泣いて帰りました。

そのとき、「私は何のために仕事をしているんだろうと?」思ったんです。主婦ママの働くをつくるためと思っているのに、お金がないと回せないので、そのお金を出してくれるであろうところにアプローチをかければ価値が無いと言われ……。「私は間違っているんだろうか」と、思いました。

それで仕事をやめようと思い、帰って主人にそう伝えると、「いいよ。明日から専業主婦になりな」と言ってくれて。でも「これまで頑張ってきたのってあんまり意味ないよね」とも、言われてしまいました。

そのとき、やっぱり主婦ママの働くをつくりたいと思いました。もう一度、やり方を変えて挑戦しようと。次に考えたのが、私が営業して、主婦ママに仕事をふるというスタイル。それが今の「マミーゴー―」です。



大手有名自動車メーカーの仕事を受注!
差別化とブランド力で登録者数200名超へ

 

ただ差別化をしなければならないので、「ITができるママ集団【ITマミー部】」をつくろうと思いました。まずは自ら勉強して、アプリをつくれるようになりました。

実際、ママでアプリをつくれる人はあまりいないので、うまくいけば「IT×ママ」と名乗れると思ったんです。彼女たちが活躍する場所を商品にして、私は営業をかけることに決めました。

もう一つ、「女性だけどちゃんとできるの?」と思われてしまうのを避けるために、ブランド力を高めることにしました。

それで大きい会社との実績をつけていこうと思い、去年1年間で大手有名自動車メーカーさんと、マイクロソフトさんと、あと人材会社でいうとパソナさんにアプローチをかけました

大手有名自動車メーカーさんの場合は、社長に直接、営業をかけました。半年ほどアプローチした末、なんとか受注していただけました。

すると、大手有名自動車メーカーさんと仕事をしたというだけで、勝手にその言葉が歩いてくれて、まわりが営業をかけてくれるようになりました。

マイクロソフトさんには、教育コンテンツや学ぶ場を提供してもらい、半年間ほどのプログラムでスキルの底上げをしました。

その結果、マミーゴー―は無料で教えてくれる、さらに仕事もくれる、という口コミが広がり、登録者は200名にまで増加。営業もかけやすくなりました。「200名いるのならこういう仕事もできる?」と、提案されることもあります。



起業の醍醐味は「魅力的な人との出会い」と「自身の世界観をつくれること」

 

起業して良かったと思うことは2つあります。ひとつが“出会い”です。起業してからは、いわゆる起業仲間にお会いすることが多くなりました。やっぱり、志をもって何かを成し遂げようとしている人はとても魅力的で、学ぶところが多いんです。

つい最近、リアルワールドの菊池社長とある本に掲載していただいて、そのときに企画書を捨てられた話をしたんです。すると「良かったね」と言われて。「それがあったから、今のキミがあるんだね」、と。

普通の人に言ったら、「大変だったね」と、一緒になって暗くなってしまいます。でも起業家のマインドを持っている人は本当にポジティブで。そういう人に出会えるのは起業して良かった点ですね。

もうひとつは、“自分が創りあげたい世界をつくれる”ということです。私の場合は「主婦ママの働くをつくる」という世界観をもっています。

もちろん、主婦ママの働くをつくるのは大変です。彼女たちは時間と戦っているからです。そのために、ママたちができる仕事をとってきて、提供できるのはやりがいとなります。

「仕事を楽しくできました!」などの言葉をいただくと「これからもいっぱい良い仕事をとってきます!」と思えます。そういう自分が創りたい世界をつくれるのは、起業ならではですよね。



情報と人脈、そしてお金。
自己満足だけでは多くの人を幸せにできません



これから起業する人は、ぜひfestivoさんのような集まりに参加するべきだと思います。そういうところに行けば、自然と情報が集まり、人脈もつくれます。

あと、これは私の失敗談からなんですけど、私が自分で会社を立ち上げて給料をとったのが2年前からなんですね。それまではとっていなくて。でも、10円でも100円でも絶対にとったほうがいい、というのが今の考えです。

5年前に立ち上げて、スタッフもいて、スタッフには給料を払っていましたが、自分の給料をとっていないことに満足していたような気がして。本当の意味でお金にシビアになれていなかったんです。

それで2年前から少しでもとることにしました。そうしたら、「自分の給料をこれだけとっているんだからプラスαで稼がなきゃ!」となり、事業が飛躍したんですね。

自己満足だけでは、より多くの人を幸せにできないということがわかりました。やっぱり、ある程度の稼ぎは必要ですね。

 

 

 

【おまけ企画】起業家の一日ウォッチング
「荻野 久美子さん」の一日

早ければ4時ごろに起床。朝は勉強の時間。新聞や本を読んでいます。それから子どもの食事を用意。10時から仕事をはじめて17時ぐらいまで。朝から夕方まで、営業で外回りをしています。17時以降は家事。会食があるときは前倒しで家事を行うことも。たいてい22時ぐらいに就寝しています。



【起業家プロフィール】株式会社マミーゴー 荻野 久美子CEO

1979年大阪生まれ。東京都在住。1999年、甲南女子大学短期大学部卒業。父親のリストラを機に、兄と店舗のデザイン設計・製作施工を事業とする会社『クリエイティブスペースノット(現㈱ノットコーポレーション)』を設立。以後、2013年春までの13年間、経営に携わる。2010年、教育事業を行う『株式会社ヒメルリッチ』を設立。2014年には、「IT×ママ」をテーマに『株式会社マミーゴー』を設立。主婦・ママの働くを支援している。



ITやWEB制作に強い主婦・ママ200名の集団〈ITマミー部〉の力を活かして中小企業の業務効率のお手伝いを致します。具体的には、データ入力・ライティング・企画書作成、データ集計、WEB制作、ランディングページ・バナー制作、コーディング、システム更新、アプリ開発等。特徴は、女性向けの企画・デザインが得意で、当社の女性コミュニティ10,000名にマーケティングを実施し、制作を進めます。

(編集:山中 勇樹