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「自分の人生は自分で決める」 都会ではなく地方での起業を選択したアラタナ創業者穗滿氏の8年(株式会社アラタナ 穗滿 一成Co-founder)【festivo起業家インタビュー】

一歩先行く先輩起業家、事業家や特異な視点をもつ起業家の今を切り出すインタビュー企画、festivo起業家インタビュー『Our life is our flame.-情熱に生きる僕らの今-』。今回は宮崎に1000人の雇用を作るべく奮闘し、2人からグループで150名の規模にまで成長した株式会社アラタナの共同創業者の一人、穗滿氏に登場していただきました。

アラタナがどうやって今の規模にまでなれたのか、8年の歴史を紐解きます。

 

「怖いとは思いませんでした。12万円しかもらっていなかったので」

 

都城高専を卒業した後、地元のシステム会社に就職しました。そこでWEBサイト制作やサーバー構築などを3年ほど経験。その後、現在アラタナの会長である濱渦と地元の宮崎で会社を設立しました。濱渦は高専時代からの友人です。

もともと独立願望などはみじんももっていませんでした。どこかの企業に所属するものだと思っていたので。でも、濱渦と一緒に飲んだりしていて、最新のWEBの話などをしていると「やっぱりWEBが好きなんだな」ということに気がついたんです。それで「一緒にやったら面白そうだね」という話になって。23歳のときでした。

起業するのを恐いとは思いませんでした。それほど給料をもらっていなかったですし。手取りで12〜3万円ぐらいでしょうか。実家にいて親孝行はしていましたが、彼女もいなかったので、貯金も百数十万円あったんです。なので、1年くらいなんとかなるかなと。「辞めて学生時代の友人と会社作る」って親に言ったら、さすがに最初は猛反対されました。でも、「もっと仕事がしたいだけなんだ」と伝えると、応援してくれるようになりました。

 

ラーメン店で気づいた「ランチェスター戦略」。絞り込むことの大切さ

 

創業後、最初はWEB制作をしていました。ブログもシステムから作れるし、オープンソースも使えるし、デザインも写真撮影もできる。そういった「何でもできます」という感じで事業を始めたんです。価格も安く、クオリティも他の会社には負けない。とくに宮崎県内では絶対に負けないという自信がありました。

しかし、必死に営業をかけてもキャンセルが出る。このままだと仕事がしたいのにお金のことばかり考えるようになってしまう。やがて、もっとちゃんとしたサービスを作るか、別の考え方をしなきゃダメだと思うようになりました。

そんなある日、2人でラーメン屋に行こうって話になったんです。「しょっぱいラーメンでも食べに行こう」と。しょっぱいんですよ。でも、なぜかそこに通っていました。

向かう道中で信号待ちをしていると、「ちゃんぽん」とか「焼きそば」とか「オムレツ」など、さまざまな料理を提供しているお店の“のぼり”が目に入りました。昼食時なのに駐車場はガラガラです。そこで思ったんです。「なんでこんなにバラエティに富んだお店なのに人気が無いんだろう」と。

これは、僕たちがやっていることとまったく同じでした。「WEBもやります、写真も撮ります、ブログもやります、安いです、うまいです……」。でも、お客さまには覚えていただけない。つまり、覚えてもらえるだけの尖ったものがなかったんです。

重要なのは、ラーメンが食べたい時に、そのしょっぱさを思い出してこのラーメン屋に来てもらうこと。“なんでもできる”ということは、“なんにもできない”のと一緒だと気づきました。ちょうど、ランチェスター戦略の本なども読んでいたので、ヒントになったかと思います。

絞り込むことにはかなり悩みました。そんななか、郊外に大型ショッピングモールができたこともあり、生まれ育った中心市街地の人通りが少しずつ寂しくなっていって。店舗を構えるオーナーさんは集客が課題になりはじめていました。その対策としてネットショップを始める方が増え始めていたので、後発の僕らができることを絞るとしたら、ネットショップだなって思いました。

 

300万円の資本金はすべてオフィスの内装に。いきなりの倒産危機!?

 

当時、ネットショップに詳しい人はあまりいなかったんです。ノウハウがなかったというより、経験している人がいなかった。相談先がなかったんです。でも濱渦は、過去にアパレルのセレクトショップでネットショップの担当をしていたので詳しかった。

とくにアパレルは、ブランドが強いという側面があります。なので、ブランドの話ができればそのまま信頼につながります。「こいつらはただ売り込みに来てるんじゃなく、根幹的な悩みとか、見せ方とか、ブランドからの見られ方もあわせて、良いアドバイスしてくれそうだ」と。これでアパレル専門のネットショップで勝負するところまで絞り込めました。

ちなみに、将来的な採用のしやすさを見越して、資本金の300万円はすべてオフィスに投入しました。300万円で起業して、300万円ぜんぶです。いきなり潰れかけましたよ。

覚えている方もいるかもしれませんが、その当時「ワイキューブ」という会社があったんです。そのワイキューブが、オフィスに多額の資金を投入して、多くのメディアに取材されていました。単純に憧れていたんですね、そういうのに。

もちろん、採用にもちゃんと役立ちました。ジョインしてほしい人材に声をかけて、オフィスで飲み会をしつつ、しつこく口説いたりもしていて。彼らが当時勤めていたオフィスはまさに“ザ・事務所”だったので、僕らのオフィスは相当オシャレにうつっていたと思いますよ。

 

1日100件の電話営業で契約件数ゼロ。それでもあきらめなかった理由

 

営業に関しては面白い人がいて。当時、コピー機を売りにきていた営業マンがいて、なぜかアラタナのことを気に入ってくれたんですよ。その彼が2〜3ヶ月後にジョインしたんです。

営業スタイルがスゴいんですよ。ガムテープで受話器と手を固定して「いい話が聞けるまで、手応えがあるまで電話をかけ続けます!」、と。自分でやっていたんですよ。僕たちが指示したわけじゃありません。それで「こいつ面白いな」と思いました。

ただ、実力はあったと思いますが、最初の1週間は電話をかけまくってもまったくヒットしなかった。毎日100件ぐらいはかけていましたけど。途中で「もうダメかも……」と思いましたね。

でも、希望もありました。トークの内容がだんだん変わっていったんです。契約には至らなくても、「考えておくよ」と言われるようになったり、1時間ぐらい話をしてくれたり、質問をしてくれるようになった。手応えを感じるようになったんです。

ようやく契約をとれたのが、熊本のお客様から。それからは、電話口で話を聞きながら、その場でシステムを改良するということも行いつつ、とにかくたくさんの受注をいただけるように努力しました。

 

資本金300万円からはじめて4.5億円の会社へ。
ピンチを一緒に乗り越えられる人たちと働ける喜び

 

キツいと思った経験はあまりありませんが、強いてあげるなら技術トラブルがあったときですね。お客さまに大変ご迷惑をおかけし、その時ばかりは社内もかなりザワつきました。

心苦しかったのは、営業やサポート部門の人たちに対してです。彼らがお客さまに謝罪したり、事情を説明していたので。技術の責任者として、これほど精神的に辛いことはありません。

でも、社内が分裂するということはありませんでした。クレドにもあるように、「制作と営業の二人三脚。互いを尊重して一つのサービスを作ろう」ということが実感できた場面でした。

創業から8年。2人ではじめた会社は、今、アラタナ以下の子会社もあわせると150人規模です。資本金は300万円から4.5億円へ。ボクたちは大きく成長しました。

でも、起業して本当に良かったと思うのは、「これからもこのメンバーと一緒に仕事ができる」ということ。世界を変えるようなものを、これからも一緒になって作っていけるかと思うと、本当にワクワクしますね。

 

自分の人生は自分で決める!
起業したいエンジニア募集中。起業の話もできます

 

自分の人生の主人公は自分自身だと思います。自分の人生を考えたとき、失敗は経験でしかありません。経験に失敗という名前をつけるかどうかは自分次第ですから。

会社にいるのが楽しいなら、それでもいいと思います。でも、ブレるのはダメです。大切なのは、客観的に自分の人生をみたときに、ベストは何なのかを常に考えること。

もしボクがあのとき起業していなければ、まったく違った仕事をしている可能性が高いです。それはそれで良い人生だったかもしれませんが、会社の役員でいて、素晴らしいスタッフと仕事ができて、これからも良いものを作っていける現状は、あのときに起業したからこそ手に入ったものだと思います。

うちの会社にも、起業したいと思っている人がいるんですよ。でも、やっぱり学びたい、と。とくに技術者は、一回ちゃんとした人たちのもとでプロジェクトをまわしてから起業したいと考える傾向が強いです。

ボクも一度、会社に勤めました。独学でも学べますが、相当レベルが高くなければ、食べていくのは難しいと思います。ですので、弊社ではそういう人も採用しています。鋭意、採用募集中です。

ネットショップにはいろいろなテクノロジーが使われています。起業する前に、何らかのプロジェクトから学びたいとか、小さい案件から大きなクライアントまで幅広く経験したいとか、エンジニアとして箔をつけたいのなら、ぜひうちへ。

起業の話が聞きたいのなら、ボクもできますので。

 

【おまけ企画】起業家の一日ウォッチング
「穗滿 一成さん」の一日

 

6時に起きて、6時半ごろから離乳食の準備。7時半に出社。最近は車で1時間ほどかけて出社していますが、電車で行くこともあります。会社には8時半すぎに着いて、9時から始業。まずは朝会(昨日から進んだこと、今日やること、課題の報告)です。午前中はSE業務、お昼前には東京事務所と打ち合わせ。午後は千葉にある親会社と打ち合わせ。15時以降は黙々とSE業務ですね。18時までが就業時間なので終礼をして、その後はメンバーと雑談。勉強会をすることもあります。20時頃には帰宅して、22時すぎからプログラミングの勉強。2時ごろに就寝です。週末は子どもと遊んでいます。

 

【起業家プロフィール】株式会社アラタナ Co-founder 穗滿 一成 氏

都城工業高等専門学校卒業後、地元である宮崎県のシステム会社に就職。その後、高専時代のクラスメイトと株式会社アラタナを設立。創業メンバーとして、技術面から会社の成長に大きく貢献する。現在、株式会社アラタナ専務取締役 / co-founder / EC-CUBE公式エバンジェリストなど、多数の業務を担当。「IT飲み会」を主催するなど、外部での活動も精力的に行う。

 

 

アラタナは経営理念に「宮崎に1000人の雇用をつくる」を掲げています。創業者2人の地元宮崎で事を成したい、そういう思いが込められています。私たちは地方が抱える課題に宮崎で答えを出し、来たる日本の将来に光を見出すロールモデルをつくりあげたいと思っています。

(編集:山中 勇樹