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30,000部の折込チラシで反応ゼロ それでもあきらめない“新しい教室”への挑戦(株式会社Curio school 西山 恵太CEO)【festivo起業家インタビュー】

一歩先行く先輩起業家、事業家や特異な視点をもつ起業家の今を切り出すインタビュー企画、festivo起業家インタビュー『Our life is our flame.-情熱に生きる僕らの今-』。今回は”Learn by Doing(実践から学ぶ)”を大切にした創造力を育むスクールを小学生向けに展開する株式会社Curio school 西山 恵太CEOに登場していただきました。

”頭の中の95%は事業のことを考えている”。そんな西山さんのモチベーションの源泉はどこからくるのでしょうか。

デザインセンスに限界を感じ、デザイン思考に出会ったことが転機に。
起業に踏み切れたのは”売れたから”

 

大学では製品デザインの勉強をしていました。大学に入学するまで、絵を描くことには自信を持っていたんです。でも、大学の同級生たちと比較してみると、ぜんぜんイケてなくて……。

差を生んでいたのはアイデアでした。質・量ともに。ボクの場合、絵は描けるけどアイデアが出なかったんです。ショックでしたね。

大学院に進学すると、たまたまスタンフォードに行く機会がありました。そこで出会ったのが「デザイン思考」です。

デザイン思考を学び、クリエイティビティは後から身に付けられることが分かってきた。すごく良いものに出会ったな、と。でも一方で、もっと若いときに、それこそ小学生や中学生のときにデザイン思考を知っていれば、自分自身のクリエイティビティはもっと育まれたのではないかと思ったんです。

それが、社会人になってからワークショップをはじめた理由です。土日や祝日を使いながら、小学校、中学校、高校、美術館、図書館などでデザイン思考を教えていました。

課外活動を3年ほど続けていると、単発の授業に限界を感じるようになりました。数時間~半日ほどの授業で学んだことは、やがて薄れてしまい、いずれは忘れてしまう。再び“固定観念という枠”が復活する。

それで起業を意識するようになりました。実際、起業に踏み切れたのは、お金をもらえたからです。出資ではなく、サービスの対価として。小学校や中学校では無償で授業を行っていたんですが、美術館や図書館は多少なりともお金を出してくれたんですよ。

それと、たまたまアメリカのヌエバスクールで、ある先生と出会いったこともありまして。「日本でも学校を作りたいよね」という話で盛り上がり、『Curio school』を立ち上げました。

 

教育系ベンチャーは「ミッション」「ビジョン」が大事。
共感によって人が集まる。

 

お金は自己資金と、あとは共同創業者の方にも出していただきました。

社員は雇っていません。役員は私と他にもいますけど、あとはボランティアです。ミッション・ビジョンを共有したうえで、みんなに協力してもらっています。

たとえ今後、利益が増えても、社内で揉めるという心配はしていません。なぜなら、深いところでミッション・ビジョンを共有できているからです。

教育系の事業なので、ミッション・ビジョンがしっかりしていないと、人も集まらないですし、共感も得られないんですよ。

ただ、属人的な事業なので、「ファシリテーターがいなくなったら……」という心配はありますね。そこは、誰でも授業が行える仕組みをつくってカバーしようと思っています。

4月に登記したばかりなので、とくにこの1年は、そういった中身の部分をつくり込む予定です。

 

ビラ3万部、20万円の投資。
電話の前で待っていたけど、反響はゼロ。伝え方の大切さ

 

失敗談としては、過去、3万部のビラを配布して問い合わせがゼロということがありました。

「本当に配られたのかな?」と、業者を疑いましたよ。折り込みチラシなので、総額20万円ほどの投資です。

これで「30人ぐらい来てくれたら」と期待していたのですが……。反応率で言うと0.1%ほどの予測です。

チラシ配布日、電話を置いて待っていました。でも一向に鳴らない。メールも来ない。おまけに、サイトのアクセスも一切あがりませんでした。誰にも響かなかったんです。

失敗の原因として考えられるのは次の2点です。

ひとつはゴールデンウィークあけというタイミング。4月までには学習塾や習い事を決めている方が多いので、時期的に遅かったのかと思います。

もうひとつは、ターゲット層と配ったビラの内容が乖離していたということです。実際に、ターゲット層の方にヒアリングしてみると、「コピーが刺さらない」と言われました。「気になるキーワードは散らばっているけど、それをつなぐストーリーがない」、と。

ターゲット層に響く内容になっていなかったというのは大きな失点ですね。

 

好きなことを極めた結果、仕事になる。「新江戸時代」の到来です

 

現在の世の中は、クラウドソーシングもそうですが、あらゆるものが仕事になってきています。物を運ぶにしても、企業だけでなく個人でもできる。ウーバーやAirbnbなどはその代表です。誰にでも、個人でも仕事ができる。

もっと言えば、大企業に就職しなくても、フリーランスという働き方もあります。、もしくは、自分が好きなことを極めて、それが価値となり、仕事になる。そんな世の中がくると思っています。

具体的な例として。あるゲーマーの方がいて、24時間ゲームばかりしていました。でも、それでは生活が成り立ちません。

考えた結果、VR(バーチャルリアリティ)に関するメディアを立ち上げることにしたんです。アメリカの最新情報を仕入れるなど、もともと好きだったことを組み合わせての取り組みです。

そのサイトが、VRに関する日本一のメディアになったんですよ。ニッチですが、ニッチなのでコアなファンもいる。ファンが増えれば収益化も可能です。

好きなことを極めた結果、仕事になる。これぞまさに、「新江戸時代」の働き方です。

大事なのは「好奇心」です。追求していく姿勢と、好きなことを深堀する探究心。Curio schoolでは、そういったスキルを身につけてもらうことを目的としています。

「楽しいことがあるなら、それをトコトン追求すること」。僕の考える”好きなこと”の定義

 

これから起業をする人に伝えたいのは、「楽しいことがあるなら、それをトコトン追求するべき」ということです。

企業に属していても、楽しいなら辞める必要はありません。ただし、そのまま企業に属していても、転職しても、自分が好きなことを実現できないのなら、起業したほうがいいと思います。

頭の中を100だとしたら、ボクは事業のことを95ぐらい考えている。それぐらい楽しいし、考え続けていても苦じゃないんです。それが“好きなこと”の定義です。

あと、起業するかどうか悩まれている方の多くは、WHYを追求しすぎだと思います。「ちゃんとした原体験がないと」とか「WHYがないと起業しちゃダメだよね」というように。でも、そうじゃない。まず「やってみなはれ」なんですよ。大事なのは。

頭でっかちにならずにやってみること。やっていくと、WHYも深まります。理屈をつなぎあわせる作業は起業後でもできますよね。

 

【おまけ企画】起業家の一日ウォッチング
「西山 恵太さん」の一日

 

 

朝は7:30ごろに起きて、午前中は資料作成(教材、企画書など)、事務作業が多いです。午後はお客さま、および社内でのミーティングです(全体定例会議が週に1回、ファシリテーターのみの会議が週に1回、イノベーションアワードの定例会議が週に1回、その他勉強会など)。あとは営業活動、企業へのコンサルティング、翌日の授業の準備など。夜は人と会うことが多いです。時間があれば散歩をすることもあります。

 

【起業家プロフィール】株式会社Curio school 代表取締役CEO 西山 恵太 氏

京都工芸繊維大学にて製品デザインを専攻。京都大学経営管理大学院に進学後、スタンフォード大学ME310プロジェクト(デザイン思考を活用した製品開発プロジェクト)に従事。2011年、株式会社野村総合研究所に入社。経営コンサルタントとして、新規事業開発支援や官公庁の政策調査・実行支援プロジェクトに携わる。仕事のかたわら、課外活動として2012年より子ども向けにデザイン思考をベースとしたワークショップを10本以上企画・実施。2014年からは広尾学園にて土曜特別講座(「社会を変えるためのアイデアを生み出すデザイン思考講座」)の講師を務める。

 

CURIO SCHOOLは6歳から創造力を育むスクールです。デザイン思考、”Learn by Doing(実践から学ぶ)”を大切にした授業を小学生対象に行っています。また中学、高校への出張授業や企業とコラボレーションしたワークショップも実施しています。http://curioschool.com

(編集:山中 勇樹