サポーターズコラム

 代表・社会保険労務士 丸山博美
HM人事労務コンサルティング 代表・社会保険労務士
丸山 博美
若手起業家のサポーター・HM人事労務コンサルティング代表社労士の丸山博美です。 絶対に成功を掴みとりたい若手起業家にとって、士業活用は不可欠であると言っても過言ではありません。とりわけ、人事労務の専門家である社労士は、皆さんの身近なブレーンとしてあらゆるシーンでお役に立てることでしょう。 現状、「社労士って何?」という方がほとんどかと思いますが、本コラムを通じて「社労士って便利」と思っていただけるよう、情報発信をしていきたいと思います。

マタハラ訴訟に学ぶ、労使関係のあるべき姿

HM人事労務コンサルティングの丸山です。


先日、最高裁にて、とある裁判に重要な判決が下されました。

すでにニュース等でご存じの方も多いかとは思いますが、妊娠を理由とした降格処分の違法性を問うもので、いわゆる「マタハラ(マタニティハラスメント)訴訟」として注目されていた裁判です。


裁判所ホームページにて判決文が公開されていますので、まずはご一読下さい。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84577


原告の女性は第二子妊娠中、労基法第65条第3項に基づき「軽易な業務への転換」を求めたところ、異動後に管理職を免ぜられ、さらに育児休業を終えて職場復帰した後も管理職に任ぜられることはなかったとのこと。本件は「妊娠を理由とした降格」が男女雇用機会均等法に違反するとして、訴えが起こされていたもの。最高裁は、女性が妊娠後に降格されたのは男女雇用機会均等法が禁じる不利益処分に当たるとして、一審、二審の判決を破棄する判決を下しました。


判決をお読みになれば分かることですが、一審、二審を覆す最高裁での判決のポイントは概ね下記の通りとなります。


・配置転換後、業務負担が減ったかどうかは定かではない

・むしろ妊娠を契機に、合意なく(しぶしぶ了解したとのことですが)管理職の地位を解かれるという不利益な取扱いがあった

・育休後も管理職への復帰は出来ず、「軽易な業務への転換」は一時的な措置ではなかった


今回の最高裁の判決について、「働く女性の追い風となる」「画期的な判決」と称される一方で、「降格は妥当な判断」「仕事は軽くしておいて役職はそのままとは自分勝手」という反対意見も続々。巷の反応は大きく分かれてるようです。


本件、皆さんにはどのように感じられたでしょうか?

病院側が悪いのでしょうか?それとも、女性がワガママなのでしょうか?


判決はさておき、個々に感じるものがあって良いと思います。

これから起業される、もしくはすでに起業されている皆さんにとっては、決して他人事ではありません。

また、妊娠・出産に限らず、介護や病気に絡んで本件同様のことが、御社で起こるかもしれません。

その時に、皆さんは事業主としてどういうスタンスで臨むのでしょうか?

ぜひ今一度、ご自身なりに考えてみていただきたいと思います。


ここからは若き起業家に向け、後学のために伝えておきたい私個人の考えですが、本件が訴訟という形にまで発展してしまった背景には、「労使間のコミュニケーション不足」が根底にあったのではないかと感じざるを得ません。


妊娠中という特殊な期間につき、すべての女性がこれまで通りに働けるとは限りません。そのことを考慮した上での配置転換であり、辞令であったということは容易に想像できます。また、使用者側に裁量権がある限りは、人事異動の際に逐一労働者の同意を取らなければならないというわけでもありません。

しかしながら、妊娠したからといって「勤続10年でようやく得た管理職のポストを半ば一方的に外される」、それが「一時的ではなく出産後も」となれば、やはり重大な不利益取扱いとして受け取られても仕方のないことです。たとえ人事が裁量権に基づいたものであったとしても、それが行われたのが妊娠・出産期というデリケートな期間であることを鑑みれば、病院側からしかるべき説明があるべきだったのではないでしょうか?


「結果として管理職を免ぜられた」、「結果として不本意な形になってしまった」ということでも、それに至るまでの経緯によって、労働者側の感じ方は大きく異なるものです。使用者側のスタンスとして第一に求められるのは、“一方的”と思われる言動は避けること。本件においては、労働者側の意向にもしっかりと耳を傾け、それに寄り添いつつも、実情を理解してもらえるよう十分な説明をしていくことが大切だったのではないかと感じます。