サポーターズコラム

  堀江裕介
堀江 裕介
慶應義塾大学環境情報学部2年

賢者の見る未来 〜What is next?〜 JINS社長、田中仁さんに聞く眼鏡業界の未来 《成功の法則 地方ビジネスの利点》

 

慶應義塾大学2年の堀江裕介が、現在日本、世界の中で、斬新なアイディアや発想力で世間に大きなムーブメントを起こしている賢者にインタビューをするという企画「賢者の見る未来 〜What is next?〜」。

第一回目は、眼鏡業界で他社にはない、斬新なアイデアと経営戦略で圧倒的なスピードで業界ナンバー1まで登り詰めた株式会社ジェイアイエヌの創業者であり、代表取締役である田中仁さんにインタビューさせていただきました。

 

【創業のきっかけ:過去】

堀江:ブルーライト対策眼鏡JINS PCにを思いついたきっかけは何ですか??

田中:自分が目が疲れていて、病院に行ったところブルーライトが原因かもしれないと言われました。その時の研究ではブルーライトが目を疲れさせる原因だということは分かっていましたが、しかしそのブルーライトが具体的にどのように悪いのかは解明されていませんでした。そこで共同で研究しようということになって、マウスを使った実験などをしていきました。自分が欲しいものを製品にしました。

 

 

堀江:研究はまだ続いていますか?

田中:はい、まだ継続しています。

 

 

堀江:JINSさんの眼鏡は安くて、良い商品というイメージですが、今後低価格での販売がメインになっていきますか?

田中:そうですね、JINSは市場最低、最適価格です。

 

 

堀江:薄利多売という感じですね?

田中:いいや、それでも十分利益は見込めます。市場最安値でやっていても、利益はあります。やはり利益というものは企業の成長の源泉でもありますし、度外視してはいけない部分なんです。

 

 

堀江:今まで経営してきた中で挫折した経験はありますか?

田中:上場した後の2008年頃ですね。新興市場に上場して、安心、慢心してしまい、守りに入ってしまった。やはりチャレンジしないことが1番のリスクですね。

 

 

堀江:今、チャレンジというワードが出てきましたが、最近でもJINSさんは新しい試みをしていて、COLOR CONTROL LENSを販売し始めましたよね?

田中:あれは、調光レンズと言って昔からあったものですが、昔あったものはすぐに色が変わらないし、値段も高い。そこで他社と共同開発をして、3990円という安い値段で売ることが可能になりました。だからあれは既存商品をリニューアルして価格を下げた感じです。

 

 

堀江:韓国で安価な眼鏡を見たときには、いけるという確信はありましたか?

田中:ありましたね。いけると思ったのにはもう1つ理由があって、前橋で生まれて、前橋の多くのメインロードに多くの眼鏡屋さんがあったのですが、どの店を見てもあまりお客さんが入っていなかった。しかし四季報を見ると、ある会社で売り上げが670億で経常利益が120億出ていた。それに気がついた瞬間いけると思いましたね。

 

 

堀江:今まで企業を経営してきた中で、精神的にダメになってしまったことはありましたか?

田中:あまりないですね。そういう意味では楽天的なのかもしれません。苦しいことはたくさんありました。

 

 

堀江:韓国に旅行に行ったときに、低価格の眼鏡を見つけて、日本の眼鏡がどれだけ高くて、中間費用がかかっているのかを感じて眼鏡の販売を決めたそうですが、ビジネスを初めたきっかけは、どの分野で勝負すると決めていた訳ではなくて、日本の眼鏡業界の実態に気がついて、それで勝負しようと決めたんですか?

田中:そうですね。例えばソフトバンクの孫さんの場合はアメリカに留学して、インターネットと出会ってビジネスを始めたり、ワタミの会長も世界放浪の旅に出て家族が団欒の良さを感じて、飲食業を始めました。そのように、業種をしぼるのではなく、その時々で出会ったものでビジネスを始めていると思います。多分皆どんな人にも目の前にはチャンスはあるのですが、それを常に問題意識を持って掴みに行くか、行かないかの問題だと思うんですよね。

 

 

堀江:最初に就職なさってから、自分が会社を立ち上げていますがなぜそのような道を選んだのですか?

田中:父親の影響で学生時代から独立したいという気持ちはありました。最初は金融機関に入ってお金の勉強をしようと思って就職しました。

 

 

堀江:最初に就職なさったのは今考えてみると正解でしたか?

田中:大正解でしたね。

 

 

堀江:学生のうちから、起業の道を考えて会社を設立している学生が多くいますが‥

田中:そうですね、最初は信用金庫に務めた後、雑貨屋で働いているんですが、そこでの経験が大きかったです。物の流れを学ぶことができました。商品はこのように作って、こうやって販売して、こういう風にお金が入ってくるんだなということを学ぶことができました。そうやって体験することは大切ですね。

それが大企業の中で働くのと、小さい会社で全部の業務をこなしながら働くのでは全然違いますね。そういう意味では起業する人は大きい会社で小さい仕事をするよりは、小さい会社で色々な仕事をしたほうが良いですね。

 

 

堀江:独立したあとは、エプロンの販売で利益を上げたそうですが、その頃から儲けるにはどうすればいいかということが分かってきていたのですか?

田中:そうですね。ただ、時代は流れて行きますから、そんなに甘いものでもありません。若いうちは経験がないから、調子のいい状態が永遠に続くと思ってしまう。それで進化が止まって、ダメになってしまう。

 

 

堀江:群馬に住んでいたときと、東京にいるときだと集まってくる情報量の差や今までと違った環境に驚きましたが、それでもこれから地方に良い企業が生まれて行くと思いますか?

田中:地方の方が、将来的なポテンシャルが大きいと思っています。例えば、前橋は人口が30万人の都市で、前橋で成功すると、日本にはその規模の都市が山ほどあるので、そのビジネスモデルはどこでも成功するんです。一方で、渋谷で成功した会社が地方に行って成功するとは思えないです。

 

 

堀江:小規模の都市で成功した会社は、大きな都市でも成功するけど、大きな都市から始まった企業は、小さい町では成功するかは分からないということですね?

田中:需要が薄いマーケットで勝つということは、需要が多いマーケットでは成功する可能性が高いですからね。ユニクロ(山口県)やポイント(茨城県)も地方から始まっていますよね。

 

 

堀江:自分が学生のころに戻ったら何をしたいですか?

田中:英会話ですね。もし英会話ができたらもっと世界が広がっていますね。英会話ができるだけでチャンスの数が違います。日本語の検索ででてくる情報と英語の検索で出てくる情報の差もかなりありますし、会話だけでなく英語もしっかりやりたいですね。シリコンバレーとかにも行っているかもしれませんね。日本だけを見ているだけではダメですよ。日本はある意味特殊な環境ですから。

 

 

堀江:眼鏡業界以外では何か興味がありますか?

田中:全ての業界にチャンスがあると思います。思いがけないとことにビジネスのチャンスは転がっているんです。

 

 

【今後のストーリー:現在】

堀江:JINSさんは低価格の眼鏡を出していますが、それが価格競争に繋がったときはどうなさるつもりですか?

田中:価格競争になったときにJINSがナンバー1の競争力を持っていると思います。それはなぜかというと、うちが眼鏡業界で、業界2位の会社の倍の本数を売っているんです。圧倒的なナンバー1なのです。調達コスト,物流コストなどを考えても他社とは圧倒的に違います。だから、お客様に低価格で商品を提供するための仕組みが完全に出来上がっているんです。これは他が真似できないところです。他社も何度かこれに対抗しようとしてきましたが、どこも真似できずに撤退気味ですね。

 

 

堀江:価格競争になっても絶対に負けない自信があるんですね?

田中:そうなったら、うちは強いですよ。同じ土俵で勝負できるから。

 

 

堀江:では最初にそのような仕組みを作って大きくしたことが勝因だったということですか?

田中:それは、その会社が本気でどんなビジョンを目指しているかに関わっていて、うちはそのようなビジョンでやっているから、やることが中途半端じゃないんです。

 

 

堀江:なぜ他の会社が真似できないのですか?

田中:例えばうちの場合は店舗に自動加工マシンを導入したりしています。ベルトコンベアー上にあるロボットアームが眼鏡を加工してくれるんです。だから1本2〜3分でできあがるんです。だからうちは眼鏡をマクドナルドのように販売できるんです。しかも度入りの眼鏡です。吉祥寺に店舗があるので是非見てみてください。

 

 

【賢者の見る未来 〜What is next?〜:未来】

堀江:将来的にGoogle glassのようなデバイスを販売する予定はありますか?

田中:今はまだなんとも言えません。Google glassはウェアラブルで、スマホでできたことを小型化した形のもので、もっと小型化すれば世の中で普及すると思いますが、JINSはJINSだからこそできるイノヴェーションを世界に起こしていこうと思っています。そして世界初の眼鏡を作ろうとしています。

 

 

堀江:それは現在既に開発を進めているのでしょうか?

田中:はい、大学と共同で研究を進めています。

 

 

堀江:Google glassは流行すると思いますか?

田中:それはgoogle glasesがどこまで進化できるかに懸かっていると思います。例えば、今掛けている眼鏡と同じくらい小型化できれば普及していくのではないでしょうか。

 

 

堀江:数十年後にこんな技術を使って商品を作りたいとか、注目している技術はありますか?

田中:今私たちは1つの仮説をもとに既に色々な研究段階に入っています。自分たちが眼鏡を変えようとしています。

 

 

堀江:現在田中さんが主催しているGIA(http://www.gi-award.com)を主催したきっかけは何ですか?

田中:もっともっとチャレンジしてほしいという思いですね。都会には起業したい人とかが多くいますが、それがなかなか地方にはいないので、若者が就職以外を考える環境がなかなかないんです。だから自分がその機会を作ろうと思っています。

 

堀江:今後、どういった人にJINに入ってきてほしいですか?

田中:接客が好きな人ですね。うちは小売りなので、とにかくコミュニケーションスキルを求めています。

 

堀江:貴重なお時間をいただき、今回のインタビューをさせていただきありがとうございました。

 

【あとがき】

インタビューを終えて、田中さんがおっしゃていた、チャレンジしないことが1番のリスクということがとても印象的だった。現状の自分に満足せず、失敗を恐れずに挑戦していくことが会社を経営していく上で大切なことなのだろう。またJINSは最先端の研究をしたからこそ、JINS PCを大ヒットさせることに成功させ、今だに研究は他分野に広がっている。JINSはこのようなチャレンジをいつまでも続けて行く限り、今後も眼鏡市場の中心で居続けるだろう。JINSも身近なところからビジネスの種を発見した。その裏には常に、何か情報をキャッチしようというアンテナを張っていることが大切だと感じた。JINSは常に数年後のトレンドを予測し、その準備を怠っていなかったことが成功の要因だったのかもしれない。

また、田中さんが地方に目を向けているように、地方は今後ビジネスを考える上でかなり重要なキーワードになっていくのではないでしょうか。確かに地方と東京では情報量の差、環境の差があると思います。だからこそ地方で目立つのは都会より難しいことではなく、地方でしかできないこともある。そんなことを考えて地方の学生も積極的に起業という選択肢を考えてほしい。